シルクロードの天山北路にある「新疆ウィグル自治区」と、河西回廊の「甘粛省」をまわった。
鳥インフルエンザで催行中止になるかと心配したが、無事出発。
今回のツアーは１３人。
めずらしく一人参加のおじさんが７名もいて、あとは夫婦３組。
名古屋から北京に入国。
いったんカバンをピックアップしに行くが、Hさんのカバンだけ、お先にウルムチへ行ってしまったよう。
トランジットの手続きをして、手荷物検査のところに行くが、ウルムチ便は別の入口へ案内される。
ウィグルの問題が関係しているのか、きびしいボディチェックと手荷物検査を受ける。
搭乗ゲートで、Hさんの身の上話を聞いていると、どこからか入ってきた鳥が散歩中。
鳥インフルエンザのこともあるので、遠くからながめる。
砂漠と万年雪のキレン山脈のコラボがきれいで、窓側の中国人に頼んで、何度も写してもらう。
*************** 新疆ウィグル自治区 ***************
中国の西北端に位置し、北はアルタイ山脈、南は崑崙山脈に挟まれ、西はパミール高原へと続いている。
中央部に横たわる３０００ｍ級の天山山脈を境に、北はジュンガル盆地、南はタリム盆地に分かれていて、タリム盆地の中には、中国最大の砂漠、タクラマカン砂漠が広がっている。
イリ盆地、そして海抜マイナス１５５ｍのトルファン盆地がある。
面積は１６０万平方キロで、日本の約４倍。
中国の省・自治区の中では最大で、中国の国土の１／６を占めている。
人口は約２０００万人で、ウイグル族をはじめ漢民族・カザフ族・回族・キルギス族などが居住している。
ウィグル族の割合は全体の１６％で、全国の９９．６％のウィグル族が、この地区に集中している。
中国では、古来から｢西域｣と呼ばれた地で、昔からオアシス国家が点在していた。
中国で漢が興り、中国とヨーロッパとの通商路（シルクロード）が確立すると、オアシス国家は中間貿易の恩恵を受けるようになり、その富を狙った北方や西方の騎馬民族の支配を受けるようになる。
隋唐時代からは、郡を設置し、直接支配を行った。
その後、唐の勢力が衰えると、チベットの吐蕃がこの一帯を支配し、９世紀には西ウィグル王国が建国された。
１０世紀には、国王がイスラム教に改宗し、以後１８世紀までに、ほぼ全域がイスラム化した。
その後はモンゴル帝国の支配を経て、１７世紀にはジュンガル王国の一部となるが、清朝の康熙帝や乾隆帝が親征を行い、版図に収め、新しい領土という意味の｢新疆｣と名付けた。
全土がほぼイスラム化したこの地域は、中国よりも中央アジアの国々との連帯感が強かったため、「東トルキスタン共和国｣の建国がはかられたが、１９４９年に中華人民共和国に統合され、新疆ウィグル自治区が設置された。
農業はオアシス灌漑農業が中心で、牧畜業も盛ん。
カラマイ・タリム・トゥハの三大油田や石炭も豊富。
また、タリム盆地南部は、玉石の産地として有名である。
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＜ウルムチ＞
日本に長年住んでいて、親の見舞いに帰って来たそうだ。
トヨタ車が展示してある横のターンテーブルで、Hさんの荷物も無事にピックアップ。
Hさん、安心したせいか、以後テンションが上がり、ムードメーカー役になる。
９時に着いたのだが、外はまだ明るい。
広〜い中国、ここでも北京時間のせい。
運転手とガイドのダブル劉さんとともに、ウルムチ市内のホテルへ向かう。
街はイスラムの雰囲気で、夜のバザールに人々が繰り出すころのようだ。
街はとてもきれいで、銀行街のような感じ。
先に散歩をしてきた旅行歴１５０回（うち中国５０回）のツワモノIさんに聞くが、特に何もないとか。
卵がとてもおいしいので、参加者最高齢７７歳のYさんに勧めるが、
「いつもいっぱい食べてるから．．．．」と。
なおも勧めたが、どうやら養鶏業をやっているよう．．．よけいなお世話だった。
ウルムチ観光に出かける。
**************** ウルムチ ******************
新疆ウイグル自治区の区都で、ジュンガル部の言葉で「美しい牧場」を意味する。
中国西北部最大の都市で、漢族の他、ウィグル・カザフ・キルギスなど１３民族が居住、人口は約２５０万人。
大都市であるが、四方のどの海からも２３００ｋｍ以上離れているため、「海から最も遠い都市」などとも呼ばれる。
昔から、シルクロードの要地で、東西文化交流の中心地である。
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ウルムチの郊外に出ると、一転して景色は何もない荒地。
オアシス都市というのを実感する。
日本では「ゴビ砂漠」というが、「ゴビ」というのは、モンゴル語で細かい石や植物のまばらな荒地の意味で、砂の砂漠とは違う。
よって、「ゴビ灘（タン）」というのが正しい．．．と、ガイドさんが何度も説明する。
納得できない追求型おじさんAさんが、後で私に聞くので、電子辞書の説明を見せてあげた。
そのゴビ灘には、豊富な石炭・石油を使って火力発電所が次々できている。
１時間半で天池のターミナルに着く。
ずらりと並んだ帽子売り場を通って、またシャトルバスに。
てっきり道が狭くなるから小さいバスに乗り換えるのかと思ったら、前と同じ大きさ。
どうやら、帽子販売に協力するためのよう。
天池までカートがあったが、私より高齢の人たちが歩くというので、１０分ほど歩く。
天池は、半月形の湖で、長さは３４００ｍ、最大幅１５００ｍで面積は約５平方キロメートル。
湖水と四方を囲んだ木々と、天山山脈の雪が光って、きれい。
なかなか出発せず、やっと来た船長が、転んだせいかイラついた出航操作をする。
出発すると、ウィグル族（カザフ族？）の人たちが大はしゃぎで写真を撮りだす。
みんな明るくて、ニコニコ愛想がいい。
また、冬は厚さ２ｍもの氷が張るので、スケート客で、にぎわうそうだ。
船を降り、乗用車に乗って、少し上にあるカザフ族の民家を訪問する。
が、車が足りず、私たちだけヤギと一緒に乗る。
カザフ族って歯が丈夫なんだなぁ．．．。
再びシャトルバスで戻るが、今度は帽子売り場はスルー。
やっぱり．．．。
昼食を後回しにして、博物館に向かう。
やり手の保険外交員風（推測）M夫人から、お菓子をもらって空腹を満たす。
博物館は、２００５年に再オープン。
新疆地区から発掘された歴史的文物をはじめ、民族的、革命的文物が５万件ほど、展示されている。
「古屍展覧室」のミイラ群は、世界にも類を見ない優れた保存状態のミイラが多く展示してある。
特に有名なのが、１９８０年に楼蘭古墓で出土した３８００年前の楼蘭美女のミイラ。
このミイラは全身の皮膚がいまだ健康的な色をしており、大きな目に濃くて長い睫毛、ほっそりとした下あご、栗色の髪が肩の下まで垂れている。
入り口に復元マネキンと画像が展示してあるが、ほんとに美人。
旅行社からガイドレシーバーを支給されていたので、説明を聞きながら、見て回る。
ホテル以外での食事はイスラム料理なので、覚悟していたが、野菜豊富でまぁまぁ。
豚肉が食べられないのは残念だが、ビールには合う。
Mさんが買ったが、翌日聞いたところによると、結んでブドウ状にしてあるだけだったとか。
な〜んだ、そういう品種じゃないんだ。
山頂には、たびたび氾濫したウルムチ河を鎮めるために建てられた「鎮龍塔」があり、たくさんの人が登っている。
てっきり、険しい山を越えていくのかと思ったら、山脈の間の平地を抜けるのだそうだ。
その平地も、谷ではなく、広い広い平野。
途中、２０１５年完成の新幹線を建設中。
ウルムチ〜北京間、現在の５０時間が１３時間になるそうだ。
新幹線で１３時間って．．．す、すごい。
山脈の間を抜ける平地は、風の通り道になっていて、それを利用した風力発電の風車が建っている。
アジア最大の風力発電とかで、道の両側に、延々延々、さらに延々延々。
仕切りのないトイレで用をすませ、風車の写真を撮る。
さらに走ると、塩湖。
近くには、韓国と中国合弁の大きな塩の生成工場がある。
なんだか、資源がいっぱい。
トルファンに入る。
******************** トルファン ********************
西域地方の政治、経済、文化の中心地。
ウィグル語で「くぼんだ地」を意味し、海抜がマイナスの場所がほとんど。
トルファン市街のそばにあるアイディン湖の水面は、海抜ー１５４mで、世界２位・中国で最も低いところにある。
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ウィグル族の帽子・イスラムナイフ・じゅうたん・絹製品から干しブドウまでいろいろ。
最近火事でもあったのか、一角が焼け落ちている。
ジュースなどおいしそうなものがあるが、体調優先！であきらめる。
名物のシシカバブーは香辛料の味付けがおいしい。
あと、ポロという人参のピラフが意外においしかった。
干しぶどうを入れて炊くので、少し甘みがつくのだそうだ。
正直と言えば正直なのだが．．．。
で、ご近所散策。
いつも先に散策をすませるIさんから、近辺の情報を聞いてからまわる。
隣の公園では、楽しそうにウィグルダンスの練習中。太極拳をやってるグループもあるそうだ。
またもや、時間前に交渉して、レストランに入る。
８：３０には、いっせいに客が入ってきて、バイキングに長蛇の列。
スイカを取りに行けずあきらめてたら、M夫人が私たちの分ももらってきてくれた。
さすが、気配り夫人。
９：１５に出発。
途中、何もないゴビ灘に住居のようなものが点々と。
なんでも三峡ダムの建設で、転居させられたイスラム民族の人たちの家だったとか。
今は別のところに転居して誰も住んでいないそうだ。
１９９３年には、４９．６度を記録したという酷暑のトルファンの、しかも何もないところに転居させられるとは．．．。
景色に変化がないので、ガイドさんがウィグル語を教えてくれた。
日本語と文法が同じだそうで、ウィグル人は日本語を覚えるのが早いそうだ。
「ヤクシムセス」 こんにちわ
「ムハメッド」 ありがとう
「ホシ」 さようなら・乾杯
「エチプル」 いくら
「アラマイマ」 いらない
が、いざ使おうと思った時には、全く忘れていた。
村に入る。
家の外に、ベッドが置いてある。
このあたりは蚊がいないし、暑いので、外で寝るそうだ。
入り口に簡易トイレがあったが、奥の建物のトイレがきれいそうだったので行く。
が、入ると、大量のハエのすみかだった。
ホコリと黄砂のため、マスクをしてから見学開始。
ここは、古代、高昌国の都があったところ。
紀元前１世紀には、すでに城壁が建てられ、その後１３００年以上も存在していた。
総面積２００万平方キロメートルの長方形で、周囲は約５kmにも及ぶ。
外城・内城・宮城の三つの部分から成っていたが、そのほとんどは損壊している。
輪郭だけは、今も残っている。
玄奘が西国へ行く途中、国王に引き止められ、一ヶ月間説法を行った地としても有名である。
煉瓦道路は建設しているところ。いずれここも世界遺産になるだろう．．．。
玄奘が泊まったホテル(?)などを見る。
損壊して、残っている部分が少ないが、遺跡の広さに圧倒される。
入口に小学生や中学生(?)の団体が来ていた。
男の子にカメラを向けると、かっこよくポーズを取ってくれた。
敷地面積は１０平方キロメートルあり、それぞれの家族や苗字に分けて埋葬されている。
全ての墓が斜めの参道と地中墓室を持っており、平面的には「甲」の字型に形成されているのが特徴。
官僚・商人・庶民の墓室と庶民ミイラを見る。
このあたりは、乾燥・地下水・アルカリ土など、天然ミイラに適した気候風土なのだそうだ。
ベゼクリク千仏洞
火焔山の中腹に位置するへゼクリク千仏洞へ。
ウィグル語で「美しく飾られた家」「絵のあるところ」という意味。
南北朝時代には掘り始められ、現存する洞窟は５７個、うち４０個余りの洞窟に壁画が残っている。
総面積は１２０平方メートル。
１３世紀末に高昌王室が甘粛永昌に移され、トルファンにイスラム教が伝わると、次第に仏教は衰退し、ヘゼクリク千仏洞も破壊されていった。
さらに２０世紀初頭、残っていたものも外国人に盗み取られ、現在は一部しか残っていない。
入り口を入って、崖面に沿った階段を降りるとテラス状の回廊に出る。
左手の崖下には、ムルトゥク川、右手の崖面には洞窟が並んでいる。背後には火焔山。
有名な誓願図のある第１５窟は、事前予約がいるので今回は見れず。
デジタル復元されたものが、「龍谷ミュージアム」にあるそうなので、いつか見に行ってみよう。
まぁ、中に入っても、ほとんど剥ぎ取られて残ってないから、そちらの方がいいかも。
昼食に行く途中で写真撮影。
階段を登って、滑り台で降りるというコースが作ってある。
火焔山は、トルファン盆地の北部に位置し、東西に長さ約１００km・南北に幅約１０km・海抜約５００ｍの山地。
夏場の最高気温は４７度以上にもなり、草木は生えず、鳥も降り立たない。
この山の燃え盛る炎により、行く手を遮られた三蔵法師の一行は、その炎を消すことができるという芭蕉の扇を手に入れる為、その持ち主の鉄扇公主と孫悟空が戦った。
が、配達人が今日は休みとかで、一人レンゲ１杯分だけ。
スカーフを１２０元で買う
Yさんは、姪に高級ショールお買い上げ。
道路脇のカレーズを見るのかと思ったら、しっかり有料の博物館で見学。
まぁ、わかりやすいと言えばわかりやすいのだが、なんでもかんでも博物館にして金を取りますねぇ．．．。
万里の長城、京杭大運河と並ぶ中国古代三大工程の一つ。
天山山脈から流れる地下水を地下水路にして、ところどころに竪穴の井戸を掘る。
トルファンだけでも、１０００以上の水路があり、つなぎあわせると５０００ｋｍにもなるそうだ。
水分の蒸発を少なくするための知恵のようだ。
何種類ものぶどうや果物の干したものを味わいながらお茶タイム。
この民家が作ってる干ブドウを５００ｇ、１００元で買う。
Yさん、M夫人、ここでも大量買い。
こういう方がツアーにいると、ケチケチ組は助かる。
南北に長さ約１６５０ｍ、東西の幅最大３００ｍの古城で、交河は「ヤールホド（崖の城）」の意味。
世界遺産申請中で、看板も整備中。
１３世紀からの戦乱により、城は激しく損壊したが、城内の官署や寺院、仏塔などは、比較的きれいなまま残っている。
交河城は世界最古の土造建築都市であり、建物の配置は唐朝の都長安にならったとされている。
古いホテルのようで、こういう利用でも助かるのかも。
沈みかけた夕陽がとても大きくてきれいで、みんな子供のようにワイワイと興奮。
バスは市街地を過ぎて、何もないゴビ灘をどんどん走る。
朝、ガイドさんの説明を聞いてなかった、HさんとUさんが心配そうに話している。
「トルファン市内にいて、トルファン駅に行くのに、なんで町からどんどん離れてくんだ？」
「もう、一時間以上走ってる」
「方向が反対に向かってるぞ」
とうとう、耐えきれなくなったHさんが、ガイドさんに聞く。
「我々はどこへ行くのですか？」と。
「トルファン駅は、市街から６０ｋｍ、１時間半ほどかかります」と、ガイドさん。
中国の「市」は、日本の「県」にあたり広い。でも、市街地に駅がないというのも．．．？
待合室までたくさん階段があり、ポーターを使うことにして正解だった。
去年の内モンゴル旅行で、トランク運びが大変だったから、王さん（去年の添乗員）が提案したのだろう。
待合室に行くと、雰囲気が違う。
沿岸部や東部に出稼ぎに行くらしき人たちで満員。
旅行気分の我々は、まったく場違い。うっかり写真を撮ってしまって、ガイドさんにとがめられる。以後、小さくなってひたすら待つ。
改札が始まると、待合室にいた人たちが、１００メートルダッシュの勢いで、座席取りに走る。
１０時間以上かかる道のり、硬い座席とはいえ、座れるか座れないかは大違い。必死になるのもあたりまえかもしれない。
が、狭い。向かいの２段ベッドとの間も５０ｃｍぐらい。
カーテンもない。去年の３段ベッドよりましだと思って寝るが、夫のいびきがひどくて、ほとんど寝られず。
（甘粛省へつづく）